変身したいという願いを胸に抱いて、人は結婚するものだ。それなのにこんなことを言うのは、われながら無責任だとは思うのだが、結婚したからといって、人間がすぐに変われるはずはない。やはり、変わらない、変われない部分が多いものだろう。だって、そうでしょう。人の性格というのは一朝一タにでき上がるものではない。生まれてからずっと、毎日毎日、日を重ねながら、培ってきたものだ。ポトポト少しずつ落ちる雨だれだって、ほんのわずかのポトポトが、ふと気づくとプールをいっぱいにするほどの量に膨れ上がっている。まさにちりも積もれば山となるというわけだ。人の性格も、生まれてからポトポトためつづけたものが、やがてポトポト、ポトポト、ポトポトとなり、やがてはチャプ、チャプ、そして、結婚する頃にはダッポン、ダッポンてな具合に、充分に蓄積されていき、ひとりの人間を形づくるものだ。これではそう簡単に変われるはずがない。自分を振り返ってみても、結婚したとはいえ変わっていない部分があまりにも多い。変わらなかったというより、変われなかったというほうが正しいのかもしれない。たとえば、私は寝坊である。子供の頃、私は家族に「オネボウ」と呼ばれていた。一応は、弟が私を呼ぶときの「お姉ちゃん」の頭文字「オネ」に、愛称で使う「坊」を結び合わせたものということになってはいたが、早い話が寝坊ばかりしているから、そういうニックネームがついたのだ。結婚を控えた私は、「夫となる人には、やっぱこの寝坊問題は打ち明けておかねば。そうでないと、あとがたたるぞ」と思った。「あのね、私、寝坊だからね。朝はからきし駄目だからね、覚悟しといて」正直に打ち明けた私だったが、彼はフフンと鼻で笑っただけだった。「大丈夫、安心していいよ。俺と一緒に暮らして、寝坊していられるはずがないんだ。俺が起こしてやっから」なんでも彼は、子供の頃から寝坊というものをしたことがないのだそうだ。どんなに遅く寝ても、前の晩にお酒を飲みすぎていても、ちゃんと早朝、決まった時刻に目がさめる。そして、布団の中でじっとしていることができない。ワサワサと家の中を動き回る。おまけに、自分が寝坊しないぶん、寝坊する人間に対して情け容赦がない。
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