コルト・ギャランを出し、重工自動車事業部長だったK氏が他の部門に転出してから、社内のデザイン指導方針は合議制に変った。この結果、社内各部門の代表者によるデザイン検討会議が行なわれ、大多数の支持する意見に基づいてデザイン決定がなされた。営業サイドからは「うちのギャランはやせた印象だから売れない。日産のブルーバードUに似せてもっと丸味のある断面の太った感じにしなければ」という意見が出た。製造側からはもっとつくりやすくしろという意見が出て、オリジナルデザインは大幅な変更を余儀なくされた。「こうして皆が合意するところまで妥協してデザインを変えていった結果、無難ではあるが特徴のないものができ上がってしまった」というように、明確な指導理念の欠如は、どうしても現在ペース、すなわち現在いいものが一番いいのだといううしろ向きの発想になりがちだ。ニューギャランのもう一つの失敗は、会社の財政上の都合から変更をできるだけ少なくしようと費用をケチった点にあった。この結果、開発コストは安くあがったが、販売不振という、より大きな損失を招いてしまった。こうしたやり方はK氏が社長として復帰してから、再び強力な社長主導型に変った。社長になって、三菱自動車に来てみたら、開発がまるでおくれている。そのうえ、以前事業部長時代だったころにくらべて、生産、資材購入、販売など少しも改善されていない、というのが社長就任時のK氏の目に映じた三菱自動車だったようだ。どれもこれも早く手を打つ必要に迫られていたが、そのなかからK氏は、前述のように「乗用車部門の確立」を最大の課題として選び、開発部門をまず立て直すことにした。「優秀な製品をつくることが、経営建直しの原点である。いいものをつくれば売れるようになるだろう。売れるようになったら、工場を建てればいい。工場を建てたら、コストを下げることを考えよう。そのあと、販売、サービス部門、パーツ補給の問題にかかればよい」そういってK氏は、開発部門に対し特徴のある新しいものをつくれとハッパをかけた。
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